一人でいて

 

「ありのままの自分を愛してくれる相手が良い」

 

この言葉が嫌いだ。

嫌いということは、弱点だという事を認めるとして、だ。

 

ありのままの自分を愛してくれだなんて、随分と傲慢で強欲で怠惰だと、そう思っている。

私は紛れもなく、変わろうと思ってしまう。

髪型も、顔も、体型も。

そうして焦がれる程思ったとしても、届かなかったりするけども。

 

 

全くもって自分以外に価値のない話。

片思いである。

 

 

布団に入り目を瞑る時、頭の隅で再生された声色に気付いた。

こびり付いて離れない、あの声に気付いた。

 

 

あァ。きっと、片思いである。

 

 

届かないと理解はしている。

随分と長い間、近くで見てきたから知っている。

もう、知っている。

 

もう何を捨てて何を掴めばいいのか分からない恋。バカだとはわかっている。理解している。

 

散々考えて、決めたのだ。

もう、自分を殺すしかないことを。

 

見たいこと、一緒に感じたいと思うこと。

それを思い浮かべた相手が近くにいるということ。

これが多分幸せだと思う。

だったらもう、私は幸せです。

 

 

だから、もう届かないはずの思いを抱えながら、これまでと変わらなくて、変わっていく私で、貴方の近くにいることにした。

死んでいくのは自分だ。

自分を殺しながら過ごす時間は、幸せだろうなァ。

傷付きたくないという思いは、憧れの域を越えない。

傷付く覚悟が出来た。傷付いてもいいから、貴方に近付きたいと思った。

ならもう、進むしかないな。

 

そうして思いを抱えたまま、幸せに生きていきます。貴方の香りを忘れるまで。

一人でいて。と、そう呪詛を唱えながら。

 

 

 

 

変わらなくて良い。ありのままで良い。

そんな風に思える恋をしている人へ。

 

 

私はあなたのことを羨望の眼差しで見つめながら、幸せに生きていきます。