カワキニカサヲ
怒らない。否、怒れない。
私の性分である。
というか、何かに対して真剣であれたことなど、あったろうか。
真剣なフリをしていただけではないだろうか。
前提として言う。
私は多分、少しだけズレているかもしれない。
自分でも好きだったと思う恋人に、浮気をされたことがある
肉体関係だ。
しかも正直に吐露された。
直接だ。
その時の私はと言えば、全くもって怒れなかった。怒り方も分からない。
ただ、普通ならこうするだろうなと思い、
「じゃあ、別れる?」
と、聞いたのを覚えている。
距離を置きたいと言われた。
じゃあそうしようと応えた。
涙は出なかった。
何故怒らないかも、何故泣かないかも、分からない。ただ、そうであるだけだ。
感情などまるで無く、予想される世間一般的な応えを並べただけだ。
これが正しいのかさえも、分からない。
今だって悲しかった様な気がするし、何とも思ってなかった気もする。
ただ、今だって同じ様に応える気がする。
随分と経った今でさえ。
私が涙を流す瞬間は、いつか来るだろうか。
それさえ懸念がある。
いつしか、何も思わないまま死んでいくのだろうか。
私の心には、渇きを潤す様に雨が降る。
心は傘を差し続けている。
優しい雨なら降らないでいいと、そう嘯く様に。